自主ルール等

一般社団法人不動産証券化協会の自主行動基準

(前文)
不動産証券化商品市場が、不動産市場と金融・資本市場を融合した新たな資産運用の場として有効に機能し、持続的に発展するためには、投資家の市場の健全性に対する信頼が不可欠である。従って、事業者がその専門職能に相応しい公正かつ適切な事業活動を行うための自主ルールを設定し、これを励行することが、投資家との間に信頼関係を確立するうえで極めて重要である。 このため、一般社団法人不動産証券化協会は、不動産証券化事業の当事者である本協会会員が、その社会的使命を自覚のうえ遵守すべき倫理・行為規範として、以下の自主行動基準を定め、その普及・定着を図ることとした。

投資家ニーズに合致した商品性の確保
会員は、投資家が積極的に市場参加できるよう、投資家ニーズに合致した商品・サービスの提供に努める。

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 不動産証券化商品市場の発展には、不動産証券化によって組成された商品(以下「証券化商品」という)が投資家および市場からの信認を得ることが不可欠です。そのためには、不動産証券化商品の組成・管理・運営・販売等(以下「証券化事業」という)に関わる会員が、常に投資家ニーズに合致した証券化商品およびサービスを提供することが重要です。特に、証券化商品は、様々な専門家が関与することによって成り立つ商品であるため、各会員はその専門性を十二分に発揮し、公正かつ適正な活動を行います。

 例えば、
ア.(リスク分担の明確化)証券化商品には多数の投資家や様々な事業者が関与する場合が多く、それだけリスクの所在等が不明確になる可能性があります。かかる事態を回避するため会員は、当事者間におけるリスクの所在、リスク分担の具体化・明確化に努めます。

イ.(アレンジャーの責任)証券化商品を組成するアレンジャーは、スキームに関する詳細な情報を有しているため、他の事業者に比べ優位な立場にあり、その分、他の事業者に比べその責任が重くなるのが一般的です。よって、アレンジャーである会員は、利益相反に伴う弊害の防止、引受け・販売業者に対する説明などとりわけ厳正な業務運営に努めます。

ウ.(忠実・公正な業務運営)会員は、投資家の大切な財産を預かっていることを常に念頭に置き、分別管理はいうまでもなく、自己の財産に対する以上の高度の注意を払ういわゆる善良な管理者の注意をもって投資家財産の保護を図ります。特に、投資家財産の管理・運用にあたっては、その業務は投機的であってはならず、投資方針に沿って忠実・公正な業務を行います。

エ.(投資方針に従った忠実な運用)資産運用型の不動産証券化においては、事前に定められた基本的な投資方針に従いつつも、資産運用業者が投資家から与えられた裁量の範囲で投資家より託された資金の運用先を決定する側面をもっています。よって会員は、投資家の最善の利益を図ることを旨として、投資方針に従った忠実な運用を行います。

オ.(スキームの安定性の確保)資産流動化型は、資金調達のために特定の資産が生み出すキャッシュフローを用いて金融商品を組成する仕組みです。よって会員は、キャッシュフローを独立させて維持・管理を行い、また、当事者間で取り決められたスキームが運営される段階においては当初のスキームより逸脱することがないように努めます。

適切な情報開示
会員は、投資家が合理的な選択と判断ができるよう、常に正確で適切な情報の提供に努める。

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 投資家との信頼関係を築くためには、正確で適切な情報の提供が不可欠です。よって会員は、証券化商品には、不動産特有のリスクが大きく関わっていること、仕組みが複雑であること、関与する当事者が多岐に渡ることなどを投資家に平易かつ適切に説明いたします。

 例えば、
ア.(十分かつ明快な説明)事業者は、投資家に対し、事業内容の詳細、わけても投資判断にかかわる重要な情報を正確に伝えていかねばなりません。よって会員は、証券化商品の勧誘・販売および既存投資家に対する実績報告にあたって、金融商品の内容やスキームの仕組み、リスクの種類とその所在、スキームに関与する事業者間に発生する利益相反、ならびに運用成果(投資パフォーマンス)等の適切な情報開示に十分に努めます。また、それら情報を投資家が理解できるような形で開示します。

イ.(不動産特有のリスクの説明)証券化商品においては、証券化の裏付けが不動産(の収益)であり、不動産特有のリスクが商品に大きく関わってくることとなります。よって会員は、不動産投資市場の知識や経験の乏しい投資家でも、この市場に安心して参加し、自己判断できるよう、商品の仕組みや不動産特有のリスクを正確に説明いたします。

ウ.(説明義務・適合性の原則)(事業者たる)会員は、商品に関する多くの情報を保有しています。これは、取引において、投資家よりも有利な立場にあることを意味します。よって、証券化商品を販売する場合、会員は相手方にとってその商品が不適当と思われる場合には、商品の勧誘そのものを控えます。

エ.(断定的な判断提供の禁止)会員は、証券化商品に関連して「この商品は必ず儲かる」といった断定的判断を示して勧誘をしてはなりません。証券化商品の勧誘にあたっては、説明はできるだけ合理的な資料に基づいて行い、投資家の誤解を招くことのないよう十分に配慮いたします。

オ.(販売に関わる内部管理体制の充実)会員は、(各事業者の)勧誘ルールに従い、販売・勧誘活動が適切に行われているかどうかを監視・監査する内部管理体制を敷きます。例えば、相手方に情報が正確に伝わって成約に至ったかを再確認する内部手続の導入などに努めます。

投資家に対する誠実な対応
会員は、投資家からの問い合わせ、クレーム等に対して誠実に対応する。

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 投資家に対する誠実な対応は、投資家との信頼関係を確保するために重要です。また、会員は、投資家から寄せられる意見を基に、商品開発、販売体制の見直し、内部管理体制の充実等に活かします。

 (参考)苦情の受付と解決支援に関する規則

 例えば、
ア.(誠実な対応)会員は、証券化商品に関し、投資家からの様々な問合せに応じることがありますが、いかなる問合せに対しても、無責任な回答は行いません。また、投資家から苦情があった場合には事態を公正かつ迅速に調査し、投資家の立場にたって誠実に対応いたします。

イ.(勧誘方針の開示)販売業者たる会員は、法令により勧誘方針を定め開示することが義務づけられていますが、単に法令で定められているから行うのではなく、むしろ、投資家との建設的なコミュニケーションを促すために積極的に行ってまいります。

ウ.(相談窓口の設置)会員は、投資家からの苦情相談を行う窓口を設置し、関係部署との連絡が円滑に行われるよう社内体制を整えます。窓口で受け付けた苦情相談は、その場限りの対応で済ませることなく、社内の関係部署へ伝達し、再発防止策や商品開発に活かす体制を築いてまいります。

エ.(投資家情報の保護)会員は、投資家に関する情報を厳格に管理いたします。業務上知り得た投資家の情報を誤用あるいは悪用すること、投資家の承諾なしに流用することは絶対に行ってはなりません。

受任者としての責任
会員は、高い専門性を有する受任者として、投資家その他との信任関係に相応しい行動に努める。

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 会員は、証券化事業の遂行にあたっては、専門家に相応しい知識に基づいて十分な注意を払います。また、投資家その他信任関係にある者の最善の利益に資することのみに専念し、自己および第三者の利益を優先して投資家等の利益を阻害しないように努めます。

 例えば、
ア.(適切な業務運営)会員は、投資家や債権者から受け入れた貴重な資金を使ってビジネスを行っています。それゆえ、投資家に対しては、事業を安全かつ効率的に行う責任、またその事業内容を正しく説明する責任を負っています。これらの責任を果たすため、会員は、適切な会計報告、内部監査の徹底等適切な業務運営に努めます。

イ.(公正な取引)証券化商品は、投資家がスキームの投資対象資産の運用・管理を直接行わないことから、スキームの運営者等による不正行為や利益相反行為が生じやすいのではないかとの疑問をもたれる傾向にあります。そのため会員は、職務の遂行にあたっては専門家に相応しい良識と知識に基づいて十分な注意を払い、投資家利益を第一とした業務の遂行に努めます。

ウ.(内部牽制機能の充実)会員(特に、アレンジャーやアセットマネージメント業者等)は、業務の遂行にあたり様々な利益相反が生じる可能性があります。そのため会員は、正当性・透明性を確保するために、事業者レベルの社内基準や意思決定に関する説明ルールの確立、内部牽制機能の確保と遵守の方策等を整備し、これを従業者に周知徹底します。

法令等の遵守
会員は、関係法令ならびに本協会の定める定款、規則等を遵守する。

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 会員は、関係法令ならびに協会の定める定款、規則等とその精神を遵守し、自己責任原則にたって、全ての投資家とフェアで透明なビジネスを行います。

 例えば、
ア.(内部情報利用の禁止)会員は、重要情報なかでも内部情報の取扱い等については、厳格に対応します。特に、不動産の売買にあたってはその取引自体が相手方の会社の重要な未公開情報である場合も想定されるため、情報の厳格な管理と取引未然防止措置を整備します。

イ.(悪質商法、健全な経営)いわゆる「悪質商法(勧誘方法が悪質なもの、事業運営が詐欺的なもの等)」は、個別の会員の信用問題に止まらず、協会自体の信用をも失墜させ、ひいては証券化商品市場全体に多大な悪影響を及ぼします。かかる事態を避けるためにも、証券化商品市場に携わる会員は、そのような行為に一切関わらないことはもちろん、常に誠実で公正な経営に努めます。

ウ.(反社会的勢力に対する対応:排除のための方針と内部管理態勢の確立)会員は、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力及び団体に対しては、毅然とした態度で臨みます。そのためには反社会的勢力との関係を完全に遮断し、断固としてこれらを排除する決意と方針を内外に対し明らかにします(絶縁宣言)。また、反社会的勢力による組織的暴力に対しては、「恐れない」「金を出さない」「利用しない」、いわゆる「三ない」を基本とし、そのための内部管理態勢を整えます。

エ.(反社会的勢力に対する対応:事前・事後における注意事項)反社会的勢力の組織暴力に対しては、対応する役員、社員が孤立することのないよう、窓口には常に複数名の人員を配置し、迅速かつ組織的に対応することが必要です。企業の落ち度や不祥事を理由に不当要求が行われた場合には、速やかに事実調査と原因究明を行い、関係者の法的責任を明確にしたうえで躊躇せず警察に被害届を出すなど、妥協することなく、法律に則した解決を図ります。言うまでもなく、企業の存続に関わる問題を引き起こす反社会的勢力との裏取引や事実隠蔽などは、絶対に行いません。そうした行為は、反社会的勢力による被害を拡大させるだけだからです。

オ.(マネーローンダリング)証券化商品の販売、不動産仲介、金融商品の取引などにおいては、法令に則り、また法令の趣旨を踏まえ、本人確認などを適正かつ確実に行っていきます。たとえば、非合法目的を推測させるような大口の特殊な取引があった場合には、迅速に必要な措置を講ずること、またそうした対応が間違いなくとられているかを定期的に確認することが重要です。このような取組みの積み重ねが、反社会的勢力によるマネーローンダリングを防止・一掃することになるからです。

専門知識と職業倫理の徹底
会員は、不動産証券化商品市場の健全な発展に資するため、従業者の専門知識の習得と職業倫理の徹底に努める。

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 証券化商品市場に携わる従業者は、常に幅広い専門的知識と高度な技術が求められます。その裏付けによってのみ、証券化商品は投資家および市場の信頼を得ることが出来るからです。よって、会員は、その役職員に対し、専門家に相応しい専門知識の習得と職業倫理を学ぶ機会を用意します。

 例えば、
ア.(知識・技術の習得)証券化事業に関連する知識・技術は多岐に渡り、日々、高度化・専門化しています。会員の従業者は、高い証券化商品・サービスの質を維持していくため、前向きに、それらの知識や技術の習得に努めます。

イ.(関連法令の熟知)会員の従業者は証券化事業に関連する法令等に熟知し、その遵守に努めます。証券化商品が投資家からの信頼を得るための出発点は、まず関係する法令等の内容・趣旨を正しく理解することです。理解を抜きにした遵守活動などあり得ないとの前提に立ち、従業者はその習熟に努めていきます。

ウ.(プロ意識の高揚)証券化商品市場の発展には、証券化商品市場に携わる従業者の果たす役割が重要です。よって会員は、その従業者にプロ意識を徹底させ、専門家として尽くすべき注意、技能と勤勉さをもって、誠実に職務を遂行するよう努めさせます。

エ.(内部ルールの策定と適切な指導)会員は、本自主行動基準に示された趣旨と原則を踏まえ、証券化事業に携わる従業者の守るべき社内ルールを策定し、適切な指導を行って従業者にこれを周知徹底します。

『不動産証券化と倫理行動』

「マスター養成講座テキスト 105」より

SDGs推進方針

2030年に実現すべき社会を示したSDGsを推進するために、当協会は、第106回理事会(2019年3月15日実施)において、「SDGs推進方針」を策定しました。この方針では、SDGsの達成に向けて、不動産投資・証券化市場での事業活動における当協会の基本的な取り組み姿勢や施策の検討・実施体制を示しています。今後、この方針に基づき、具体的活動計画を策定、実施するとともに、SDGs・ESG投資における投資家の真のニーズを把握するために、投資家との対話を進めていく予定です。

ARES 不動産投資運用評価ガイドライン(私募ファンド用)

不動産特定共同事業法商品に係る「勧誘に関する規則」及び
「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律に基づく説明義務及び「勧誘方針」策定義務に関するガイドライン」